脳血管内
カテーテル治療
Cerebrovascular Catheter Treatment

小山記念病院 脳神経外科では、
脳動脈瘤や頸動脈狭窄、脳・硬膜動静脈疾患などの
脳血管疾患をカテーテルにて頭を切らずに治療を行います。

脳血管内治療について

脳血管内治療は、カテーテルと言われる細い管を手首や足の付け根の血管から挿入して、
脳動脈瘤や頸動脈狭窄、脳・硬膜動静脈疾患などの脳血管疾患を、頭を切らずに治す治療です。
最近では、治療が以前は全くできなかった急性期の脳梗塞(特に太い血管が突然詰まってしまう)
また、くも膜下出血に対しても、以前であれば開頭手術でしか対応ができなかったものが、
脳血管内治療でも治療できることが増えてきました。
これらは一例ですが、以前であれば頭や頸部を切る手術でしか治療ができなかった脳血管の病気の多くが、
カテーテル治療で治療できるようになってきております。

カテーテル治療の 特 徴
  1. 開頭や首の皮膚切開を行わないため患者の負担が少なく、安全性が高い
  2. 入院期間の短縮が可能
  3. 脳神経外科医の全てが治療をおこなえる訳ではなく、多くの特殊な機器を扱う技術が必要。

脳血管内治療専門医・指導医制度が確立されており、当院では、日本脳神経血管内治療学会の指導医(2022年現在、全国で441名(脳神経外科医は全国におよそ1万人、専門医は1929人))がこの脳血管内治療に関して責任を持って対応しております。
また、脳血管内治療に関しては認定施設制度があり、当院も認定を受けております。

検査・治療の流れ

脳血管内治療は全身麻酔で行うことも多いですが、検査の場合は局所麻酔で行います。

  1. 手首、腕、足の付け根の皮膚の局所麻酔をおこなった後にカテーテルという管を挿入します。
    (検査の場合は大半は手首、治療の場合は足の付け根から行うことが多いです)

    ここ最近は検査の場合、遠位橈骨動脈アプローチというより低侵襲な検査法を用いることが増えています(全体の半分程度の方で行っております)。

    メリット

    検査後の出血リスクが少ないこと、神経障害の合併症が少ないこと、安静時間が少ないこと(通常の手首からの検査の場合は翌日朝までバンドで圧迫、遠位橈骨動脈の場合は3時間程度)

  2. レントゲン(血管造影装置)を見ながらカテーテルを病変まで誘導します。

  3. 造影剤を適宜使用しながら、それぞれの血管で撮影を行います。
    治療の場合はそれぞれの治療器具(コイルやステントなど)を用いて治療を行います。

  4. 検査や治療が終了したら、カテーテルを抜去し、その部分の止血を行います。(専用の止血器具を用いる場合と手で圧迫する場合があります)穿刺部の安静時間は3-4時間です。

治療疾患について

  1. 未破裂脳動脈瘤、くも膜下出血

    未破裂脳動脈瘤は通常症状は見られません。ただ、破裂した場合にはくも膜下出血という命に関わる病気になります。
    未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、将来破裂のリスクがある場合には治療を考慮します。
    破裂の危険性は、動脈瘤の場所、大きさ、形状などにより異なります。治療は血管内治療と開頭クリッピング術があります。血管内治療は、コイル塞栓術という、柔らかい針金を動脈瘤に詰めていく治療が一般的に行われます。
    脳表から離れた場所、瘤の根本が狭いものが良い適応ですが、最近では器具の発達により、多くの動脈瘤に対して治療が行えるようになりました。
    さらに血流改変ステント(フローダイバーターステント)という器具が使えるようになり、根治が難しいとされる動脈瘤に対しても、治療が行えるようになりました。

    未破裂脳動脈瘤

    治療時間:2~3時間程度です。
    入院期間:4日~1週間程度(クリッピング術の場合は2週間程度)、退院後すぐに元の生活に戻ることができます。

    ステント併用コイル塞栓術

    フローダイバーター

    Pulseriderステント

    くも膜下出血

    全身状態が安定していれば治療を行う必要があります。

    破裂内頸動脈瘤に対するコイル塞栓術

  2. 頸動脈狭窄症

    頸動脈狭窄症は脳梗塞の原因となります。治療の基本は薬物治療ですが、狭窄が高度であったり、脳梗塞を起こした場合には内膜剥離術(手術)もしくはステント留置(カテーテル治療)が必要になります。どちらの治療が良いかは本人の全身状態や血管の状態を見て判断をいたします。
    内膜剥離術の場合は全身麻酔ですが、ステント留置術の場合は局所麻酔で行います。

    未破裂脳動脈瘤

    治療時間:1~2時間程度です。
    入院期間:4日~1週間程度(手術の場合は10日~14日程度)です。
    通常ステント

    頸動脈狭窄症に対するステント留置術

  3. 急性期脳梗塞

    多くの場合は、心臓の不整脈が原因でできた血栓が脳の血管に詰まって起こります。突然半身の麻痺や痺れ、呂律障害、失語(言葉が出ない)、視野障害などが出現します。脳梗塞は発症早期に治療を行うことが最も重要です。特に太い血管が詰まった場合は、tPA静注療法や血栓回収療法を行うことが可能です。血栓回収療法とは詰まった血管にカテーテルを誘導して、詰まった血栓を取り除く方法です。この治療を行うことで、従来治療では寝たきりになってしまっていたのが、歩いて自宅に帰れる方が2.7倍増加したという結果が出ております。治療が遅れるごとに治療成績が悪くなるので、1分でも早く閉塞した血管を再開通させる必要があります。

    脳梗塞に対する血栓回収療法

  4. 脳動静脈奇形

    脳の太い動脈と静脈が直接つながってしまう先天性の病気です。
    年間で10万人に1人程度で脳出血を起こすと言われています。これは脳動脈瘤から出血する場合の1/10程度と決して高くはないですが、若年で脳出血を起こす場合は、この病気のことがあります。無症状で見つかる場合には経過観察を行うことが多いですが、脳出血もしくは痙攣発作を起こす場合には、治療を検討します。根本的な治療としては手術か放射線治療を行います。
    血管内治療に関しては、手術の際の出血を減らす目的で行うことが多いです。
    医療用の塞栓物質であるONYXやNBCAを用いて異常血管の塞栓を行います。

    脳動静脈奇形(AVM)に対する塞栓術

  5. 硬膜動静脈瘻

    硬膜という脳を包んでいる膜を流れる血管が、静脈と直接つながりを持ってしまう病気です。この病気は後天性にできると言われています。できる場所によって様々な症状を引き起こします。重篤になると脳出血を引き起こすことがあります。
    この病気に関しては血管内治療で根治できる可能性があり、コイルやONYX、NBCAなどを用いて異常な血管を詰めるという治療を行います。
    血管内治療が難しい場合には、開頭術や放射線治療を行う場合があります。

    海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻(CS-dAVF)に対する塞栓術

診療体制

小山記念病院脳神経外科では、これまでも鹿行地域唯一の24時間365日脳卒中を受け入れることができる病院として努力をしておりました。
2020年からは日本脳神経血管内治療指導医が常勤するようになり、血管内治療を常に行える環境が整いつつあります。実際に、脳血管内治療件数も年々増加傾向であり、茨城県有数の治療件数となってきております。

小山記念病院カテーテル班
  • 診療放射線技師
  • 脳血管内治療専門医 寺門医師
  • 臨床工学技士
治療のための血管撮影装置(Philips Azurion7)

当院の脳血管内治療件数の推移

2020年に脳血管内治療専門医である寺門が赴任して以降、脳血管治療の件数は増加傾向となっています。
開頭手術でしか治療できなかった病気の多くが、低侵襲な脳血管内治療で対応可能となってきております。

当院の脳血管内治療件数の推移

外来受診

脳血管内治療に関しての受診は、毎水曜日、寺門医師外来で対応しております。

午前 神経内科(午前)
河合 / 島田(頭痛専門外来も含む) -
佐藤(栄) / 河野 -
河合 / 寺門 -
豊田 / 米山 -
担当医 / 齊藤 -
大学医師 / 中井 / 岡村 / 伊藤 大学医師

担当医からのメッセージ

脳血管カテーテル治療担当医 寺門利継医師

脳神経外科で脳血管内治療を担当している寺門と申します。地元鹿嶋市出身で筑波大を卒業し、茨城県内の病院で経験を積んで今に至ります。茨城県、鹿行地域の医療事情に関しては誰よりもわかっているつもりです。
以前から茨城県内でも鹿行地域は医療過疎が非常に深刻な地域であります。脳神経領域も例外ではなく、特に脳血管内治療(カテーテル治療)に関しては十分な医療を提供できていませんでした。
ただ今は状況が大きく変わっています。当院でも、脳血管内治療に関してほとんどの病気に対して対応ができる環境ができました。ここ2年間の治療件数も大幅に増え、提供する医療の質も向上していると自負しております。これまでは「頭の病気=頭を切る治療」というイメージがあったかもしれませんが、頭を切らないカテーテル治療が全国的にも年々増加傾向にあります。実際に多くのカテーテル治療をおこなってきて、患者さんの身体的な負担はだいぶ減ったと感じます。

ただ治療方法に関しては一長一短がありますので、もし頭の病気が見つかった場合でも、経過観察がいいのか、手術が必要か、必要であればどのような方法があるか時間をかけて一緒に相談しましょう。そしてその人にあった1番良い治療方法を考えていきましょう。

寺門医師 経歴
  • 平成22年 筑波大学医学専門学群医学類 卒業
  • 総合病院土浦協同病院 脳神経外科
  • 筑波大学附属病院 脳神経外科
  • 筑波メディカルセンター病院 脳神経外科
  • 日立総合病院 脳神経外科
  • 日本脳神経外科学会 専門医
  • 日本脳神経血管内治療学会 専門医、同指導医
  • 日本脳卒中学会 専門医、指導医
  • 日本頭痛学会 認定頭痛専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 臨床研修指導医

一次脳卒中センター

超急性期の脳梗塞では、血栓を溶かす薬による点滴治療(tPA静注療法)のほか、血管にカテーテルを通して血管を拡張したり、血栓を除去する治療(血管内治療)を施行しております。

小山記念病院 一次脳卒中センター

よくあるご質問

  • カテーテルの検査は全身麻酔ですか?

    局所麻酔で行います。会話も可能ですので、検査中何かありましたらいつでもおっしゃって下さい。

  • カテーテル検査の流れについて教えて下さい。

    カテーテル検査室に入室し、検査台に仰向けになって頂きます。皮膚を消毒し、局所麻酔を行い、シースという鞘状の道具を動脈に挿入します。続いてシース経由でカテーテルを血管内に入れます。造影剤というレントゲンで写る薬剤をカテーテルから血管に注入し、対象となる動脈をうつします。

  • 小山記念病院でカテーテル治療を受けるためには、どうすればよいですか?

    他院や健康診断などで治療対象の病気がある場合は、紹介状等をご持参いただき、当院の寺門の診察日に受診ください。

  • 治療にはどの程度の時間がかかるのでしょうか?

    それぞれの患者さんにより時間は異なるため、一概には言えませんが、目安としては2~3時間程度と考えればよいと思います。しかしながら、治療が大変なケースでは4時間以上にもなる場合もあります。事前に担当医にお尋ね頂くと大体の目安はお教え致しますのでお気軽にお尋ねください。

  • 治療した後にはどれくらい安静にするのでしょうか?

    手から管を入れた場合と、足から管を入れた場合とで異なります。手から管を入れた場合には検査時と同じくお部屋に帰った後からトイレに歩いたりすることができます。足から管を入れた場合には、術後4時間ほどの安静が必要となります。

  • 治療の成功率や合併症の頻度はどれくらいなのでしょうか?

    患者さんにより治療の難しさの度合いが異なりますので一概には言えない部分もあります。治療を行う前には、必ず治療の説明を一通り行いますので、その際にご説明させて頂きます。